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『百万円と苦虫女』

a0021956_21173655.jpg21歳の鈴子(蒼井優)は百万円を貯めては仕事と住む所を転々としながら根無し草の生活をしている。人付き合いが苦手な彼女が、様々な人との出会いや恋を通して自分自身を見つめ直していく姿を描く。

拘置所を出所する蒼井優…だなんて冒頭から意表を突かれたー(笑) 「女の子版寅さん」みたいなストーリーとも聞いていたけど、町から町へとあてもなく旅を続けるところは確かに寅さんだよね。でも、アグレッシブで破天荒な寅さんと違って、苦虫女・鈴子は周りの人に流されながら成り行き任せに日々を過ごしていく。

監督は「赤い文化住宅の初子」のタナダユキ。ありがちな脱力系コメディとか女の子映画にしていないのはさすが!という感じ。鈴子の流れ者生活は見ているこちらも心細くなるほど先の見えないものだったし、友達がいない彼女には始めから終わりまで孤独感が付きまとっていた。“前科者”という設定はイマイチしっくり来なかったけど、そのことがさらに鈴子の負い目になっていたのは確か。その一方で、100万円片手に町から町へと放浪ライフってのも若さゆえの特権で、その身軽さがうらやましく見えたりして。演じる蒼井優が醸し出す空気感も物語にピッタリ。幸薄さと芯の強さのバランス具合も絶妙だった。

一見不幸せに見えて、旅先での鈴子は意外とラッキーで周りの人に恵まれていたなぁとも思う。百万円貯まるのが早すぎるよ~なんてツッコミどころもあるけど、そこまでリアリティを求める映画でもないしね。桃農家のお婆さん(佐々木すみ江)&息子とのやり取りはほのぼの。素朴な独身息子・ピエール瀧(あの腹!)がイイ味出してたな~。別れ際、鈴子に桃をくれる優しさにちょっとウルッと来てしまった。

最後にたどり着いた町で鈴子は苦い経験もした。中島くん(森山未來)とのぎこちない恋はこちらにまでドキドキが伝わってきたなぁ。ホロ苦くも爽やかなラストにも大満足。タナダ監督の次回作にも期待!

公式サイト

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「百万円と苦虫女」 (08年)
監督・脚本=タナダユキ
出演=蒼井優 森山未來 ピエール瀧 笹野高史 佐々木すみ江 竹財輝之助
by pandarin_0728 | 2009-02-08 21:30 | DVD・映画鑑賞記
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