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『真木栗ノ穴』

『真木栗ノ穴』_a0021956_19281185.jpg古ぼけたアパートに住む中年男・真木栗(西島秀俊)は売れない小説家。仕事にあぶれて困っていたところに、ひょんなことから官能小説の連載依頼が舞い込んできた。そんなある日、真木栗は部屋の壁に小さな穴が開いているのを見つける。穴からは隣の部屋が丸見えだった。数日後、その部室に謎めいた女性が引っ越してきて…。

穴を覗くことに取り憑かれ、しだいに妄想と現実の区別が付かなくなっていく作家のお話。
道端で偶然見かけた物憂げな表情の女にひと目で心惹かれた作家。隣室に越してきたその女をこっそり覗くこと、そして自らの小説に女を登場させ妄想に耽るのが何よりの楽しみになるのだが、いつしか小説通りの出来事が女の部屋で繰り広げられていく。

なんだか江戸川乱歩の世界を彷彿とさせる設定だけど、前半は主人公・真木栗の行動と日常がコミカルに描かれて結構笑える。薄汚れたアパートの一室、皺だらけのシャツに不精ヒゲ、煙草を吹かしてボサボサの頭を掻く。どう見ても汚くてサエない四十路男だというのに、演じるのが西島秀俊だと何故かだらしなくてもカッコイイんだなぁ~。覗き趣味だし、不潔そうだし、時々ヘンなところでキレるし、すごーくヘンな男だけど妙に優しいところもあり、頼りなさが余計に可愛く見えてくる。女にとってほっとけないタイプなのだ。真木栗が部屋の穴を覗く時にとる無理な体勢もまた可笑しいんだよね。ヨガのポーズ…(笑)

唐突に風呂に誘う冒頭の中年女(キムラ緑子)をはじめ、置き薬屋の営業マン(尾上寛之)、近所の食堂のおばちゃん(松金よね子)、担当の女性編集者(木下あゆ美)らとのやり取りにも思わずクスッと笑わされる。反対側の部屋に住む男(北村由起哉)も相当危なかったよな…。なぜかアメリカ国旗とか君が代とか。

そんなコミカルタッチの覗き映画(!?)と思いきや、終盤には不思議な幻想ミステリーに転じる。原作は山本亜紀子の「穴」というホラー小説とのこと。ホラーというよりは、昔ながらの日本の幻想的な怪談といったほうがいいかも。牡丹燈篭みたいな感じ。監督が「狼少女」の深川栄洋なだけに、レトロで趣のある空気を作り出す手腕はさすがだ。ただ、それまでの真木栗の暮らしぶりやそのキャラクターが面白すぎたせいか、途中で月並みな幻想奇譚に転じてしまったのは少しがっかりだった。

隣室の女役に限りなくフツーっぽい粟田麗を持ってきたのはあえてなのだろうか。原作が気になる。

『真木栗ノ穴』_a0021956_1927593.jpg


公式サイト

「真木栗ノ穴」 (07年)
監督・脚本=深川栄洋 
出演=西島秀俊 粟田麗 木下あゆ美 北村有起哉 キムラ緑子 田中哲司 尾上寛之 利重剛
by pandarin_0728 | 2009-06-17 19:28 | DVD・映画鑑賞記
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