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『悪人』 吉田修一

a0021956_2057032.jpga0021956_20565237.jpg舞台は九州北部、冬。土木作業員の青年・清水祐一は保険外交員・石橋佳乃を絞殺してしまう。彼はその後知り合った別の女性・馬込光代を連れて逃避行に及ぶ。被害者と加害者、さらに彼らの家族の心の揺れ動きを緻密に描いた物語。

新聞小説として発表された本作。最近になって映画化が決まったという。タイミングよく今月6日に文庫も出たので早速買って読んでみた。奇しくも、ちょうどこの本を読んでいる頃、3年近くものあいだ逃げ回っていた指名手配犯が捕まったニュースが飛び込んできてビックリしたりもした。

罪を犯した男と彼を愛する女、被害者と加害者双方の家族の目線から描く人間ドラマとして読み応えがあり、上下巻一気に読み進めた。主人公の祐一がなぜ女を殺すに至ったのか、どんな心の動きがあったかを知りたかったのだ。というのも、祐一という寡黙な青年が人殺しをするような人物にはどうしても思えなかったから。タイトルの「悪人」が祐一のことを指すのなら、ここに描かれている彼はそれとは程遠い、むしろ孤独で繊細で弱い男だったのだ。

祐一とともに逃亡した数日間がこれまでの30年の人生で一番幸せだった、と言い切ってしまう光代の孤独が悲しかった。一方で「出会い系」という安っぽく思える知り合い方をした男女に純愛だなんて、と冷めた見方もしてしまう自分もいる。実際、死んだ佳乃は金づるになる男たちを漁るために出会い系サイトを使っていた。

結局のところ、光代は人を殺して切羽詰った祐一に都合よく利用されていただけなのか。純愛劇と思えるのも、光代の視点で描かれた場面が主だからなのか。そう思うのは疑り深すぎるだろうか。祐一からの視点が光代に比べて少ないせいか、そう思えてしまうのかも。ただ、最後の祐一の供述も含めて、真相の部分がモヤモヤとしたことで独特の余韻を生み出したと思う。

ちなみに映画のキャストは、妻夫木聡(祐一)と深津絵里(光代)に決まった。「陽」のイメージな妻夫木くんに祐一役は…ちょっと予想外。しかも、祐一は長身で筋骨隆々のガテン系という設定なのだが…。リンク先の金髪頭を見て、ますます不安になった(笑) ダークな色気出せるんだろか。まぁ演技力でカバーしてくれるのかな?

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by pandarin_0728 | 2009-11-27 21:01 | 読書
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